「freee会計の基本設計を理解する」では、freeeで経理業務を行う上で理解しておきたい、freee会計の基本設計について解説いたしました。
今回の「freee会計の基本用語を理解する①~取引編~」では、freee独自の概念の1つである「取引」について学習していきます。
「取引」は、「仕訳」に業務効率化を行うための要素を加えたfreeeの特徴的な仕様で、「ERP(=あらゆる業務を1つのシステムに集約すること)」の仕組みを成立させるために重要な役割を担っています。freeeで経理領域を使いこなすためにとても重要な仕組みとなりますので、ここでしっかり理解しましょう!
取引とは
取引と仕訳の一般論
一般的に取引というと、当事者間の合意のもと商品売買や役務提供に対する対価のやり取り(商業行為)についてを言いますが、会計における取引は、法人や事業の「資産」「負債」「 純資産」「収益」「費用」の5つのグループの増減に関する動きを指します。
そのため、災害で商品の損失が発生した場合や金品の盗難があった場合など、一般的に取引(商業行為)とみなされないものでも、会計上は資産の減少となることから取引に該当します。
取引が発生すると、その事象を仕訳の形式で記帳していきます。取引を仕訳で表すためのプロセスの例を下記に示します。
freeeの取引
会計上、日々の取引は仕訳を通して行いますが、freeeは仕訳でなく独自仕様である「取引(freeeシステム用語)」を用います。取引を登録することで副次的に仕訳が自動生成される仕組みになっています。freeeで行う記帳プロセスは下記となります。
仕訳との大きな違いは下記になります
A. 決済ステータスがある
B. 貸借の記帳が不要
一見すると、Bの「貸借の記帳が不要」=「簿記を知らない人でも記帳できる」という点に目が行きがちですが、より重要なのはAの「決済ステータスがある」ことです。
「決済ステータスがある」ことで、債権債務管理の精緻化や消込の自動化を実施することができるようになり、業務効率化へと繋がる仕組みとなっております。次頁にて、取引のメリットと仕訳の限界について解説してまいります。
仕訳の限界と取引のメリット
仕訳の限界
仕訳は非常に便利な仕組みです。貸借という仕組みを実装し、事業の経営状況を可視化することができます。しかし、この仕訳という仕組みの悩ましい点は、経理業務と分離して存在するということです。例えば、
① 注文を受けた 2,500円の商品を納品し代金を請求した
② 注文を受けた 3,000円の商品を納品し代金を請求した
③ 注文を受けた 5,500円の商品を納品し代金を請求した
④ 普通預金に 5,500円の入金があった
といった、売上計上から債権回収までのプロセスを仕訳で表した場合、下図のようになります。
そして、債権管理を行うために、上記仕訳の売掛を集計(売掛金元帳)すると下図になります。
売掛金元帳を見ることで「回収しなければいけない債権がいくら残っているか?」といった「残高ベースの確認」はできます。しかし、「入金④がどの債権を回収した結果なのか」といった「個別の債権回収状況」は管理できません。
つまり、「債権①」+「債権②」の回収結果が「入金④」なのか?「債権③」の回収結果が「入金④」なのか?が会計帳簿上で把握できないように、仕訳は仕訳間の関連性(計上時の仕訳と回収時の仕訳)を紐付けることができないため未回収債権の管理に限界が生じてしまいます。
債権回収 & 支払業務での困った
顧客の支払いが滞り債権回収を行う際「◯◯日に送付した請求書の件ですが…まだ支払われてないようなので至急対応いただけないでしょうか?」と伝えるように、顧客にどの債権の催促をしているかを知らせないといけません。
支払業務も同様に、買った物や購買先に応じて「いつまでに払うか?」の決まりがあります。
例えば「A社から500万で仕入れた設備は3ヶ月後に支払い」「それ以外のA社から仕入れた50万の備品は1ヶ月後に支払い」などといった期日管理が必要です。仮に期日管理をせず買掛金元帳の残高をもとにA社に支払うとなると、一気に550万の支払いとなり資金繰りが厳しくなってしまいます。
仕訳だと「どの債権がいつ回収できるか?回収した債権はどれか?」「どの債務をいつ支払うべきか?支払った債務はどれか?」の期日や決済状況を付与できず、仕訳間の関連性も紐付けることができないため、会計とは別にエクセル等で売掛・買掛台帳を記帳する必要が出てしまいます。
freeeでの解決策
債権債務管理が仕訳で完結できない理由は、「決済ステータスが持てない」「期日管理ができない」「計上時と決済時のデータの紐付けができない」ことにあります。
これらの課題に対しfreeeは「取引」という決済ステータス管理を軸に、決済ステータスに応じ副次的に仕訳が生成される仕組みを用いて解決を図っています。
通常、freeeで日常業務(債権債務管理・経費精算・支払依頼など)を行う際、仕訳を用いることはございません。なぜなら、下記の通り取引は債権債務管理で必要となる付加情報を所持しているため、仕訳より持つことができるデータ項目が多いためです。
④の「期日」機能とは、未決済取引の入金(支払)期日を管理する機能です。期日を設定することで「いつ回収できる債権か?」や「いつ支払わなければならない債務か?」といった回収サイトや支払サイトを管理することができます。
⑤の「決済ステータス」と⑥の「計上時と決済時のデータ紐付け」機能により、未決済取引と入出金データを消込処理を通し紐付けすることが可能となります。これにより残高ベースの消込でなく個別の債権債務単位での消込が可能となります。
取引は「債権債務管理に必要なデータ項目を追加」し「決済時のデータと紐付ける機能」と「決済ステータスに応じ仕訳が自動生成される仕組み」により、債権債務管理の効率化を図っております。
freeeの取引を活用頂くことで、エクセル等での売掛・買掛台帳管理を廃し、債権債務管理をfreeeで集約頂くことが可能となります。
取引のデータ項目及び仕訳生成例
取引の特徴的なデータ項目詳細
仕訳生成例(収入)
[取引]メニューの[取引の一覧・登録]の[取引登録]機能より仕訳生成動作を確認できます
- 例)10月1日に15万円売り上げた。入金予定日は11月30日である
- 収支区分 :収入
- 決済ステータス:未決済
- 決済期日 :2020-11-30
- 例)10月1日に店舗で2万円の商品を売り上げ、代金は現金で受け取った
- 収支区分 :収入
- 決済ステータス:完了
- 口座 :現金
仕訳生成例(支出)
- 例)10月1日に商品を18万円分仕入れ、支払いは月末締めの翌月20日払いとした
- 収支区分 :支出
- 決済ステータス:未決済
- 決済期日 :2020-11-20
- 例)10月1日にお客様との商談のため貸会議室を3,500円で借り、現金で支払った
- 収支区分 :支出
- 決済ステータス:完了
- 口座 :現金
本記事はfreee活用ガイドブックより、一部抜粋した内容を記載しております。
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